被害額63億円!積水ハウスが標的になった地面師事件

   

地面師詐欺は昔からある詐欺手法ですが、今回の事件は被害額も大きく大手ハウスメーカーが被害にあったということで、マスメディアでも大々的に報じられていました。事件発覚からだいぶ時間が経過してしまいましたが、個人的見解も含めて書いてみました。

地面師とは?

一般の方にはあまり耳慣れない言葉かもしれませんが、地面師というのは不動産を利用して詐欺を行う人たちの一種です。

具体的には不動産の所有者になりすまして勝手に不動産を売却して代金や手付金をだまし取ったり、不動産を担保にお金を借りて逃げてしまう人たちのことです。

所有者になりすますだけではなく、買主以外の関係者(仲介業者、司法書士)がすべて地面師グループということもありますが、なりすましをした犯人以外の関係者を暴くのは容易ではありません。

地面師は昔からある古い手口ですが、土地の価格がバブルによって急騰した1990年代に活発になり社会問題化したことがあります。

一時期は件数自体下火になっていましたが、オリンピックを前に不動産価格が好調なこととあわせてふたたび地面師詐欺事件が活発化しています。

63億円地面師事件の舞台

地面師の標的となった場所は東京の五反田駅から徒歩5分ほどの目黒川沿いにある古びた旅館です。

すでに旅館としての営業はしていないようですが、住んでいる方がいらっしゃるという話もあるので、ここでは名前は伏せておきます。

不動産の立地は申し分がなく敷地面積は約2,000㎡(約600坪)。開発すれば確実に人気物件になることは間違いありません。

所有者のところには日常的に売却話が舞い込んでいたようですが、「売るつもりはない」と断り続けていたとのこと。

好立地にあり旅館業の営業は終了、所有者が高齢となれば狙っていたデベロッパーは数多くいたことでしょう。デベロッパー界隈では有名な案件だったのは容易に想像できます。

事件の流れ

事件の流れを時系列でまとめてみました。

2017年4月24日,25日売買予約仮登記

2017年4月24日に旅館からIKUTAホールディングス株式会社(東京都千代田区)が売買予約を原因として所有権移転仮登記が行われます。

そして翌25日にIKUTAホールディングス(株)から積水ハウス株式会社(大阪市北区)へ売買予約を原因として所有権移転仮登記が行われます。

2017年6月1日決済

積水ハウスの発表によると決済日は2017年6月1日。

6月1日をもって所有権を旅館所有者からIKUTAホールディングスを経て積水ハウスに移転登記する予定だったものの、所有者の提出書類に不備があったため登記申請が却下されます。

所有権移転登記申請で提出した書類は、地面師が用意した書類だったと考えるのが妥当で、それが法務局の審査でひっかかったものと思われます。

その後ニセ所有者と連絡がとれなくなり、支払い済みの63億円の行方もわからなくなります。

2017年6月24日相続のため親族に所有権移転

その後の6月24日所有者から息子2日に相続され、所有権移転登記が行われています。

ものすごいタイミングですが、所有者の方が亡くなられたのでしょう。

時間の流れをまとめます。

なりすましの所有者(地面師)

2017/4/24売買予約を原因として所有権移転仮登記)

IKUTAホールディングス株式会社

2017/4/25売買予約を原因として所有権移転仮登記)

積水ハウス株式会社

2017/6/1 決済日・所有権移転登記申請
2017/6/9 所有権移転申請却下
2017/6/24 相続のため親族2人に所有権移転
2017/7/25 仮登記の抹消

事件としては典型的な地面師詐欺

ニセの所有者をつくりあげて書類を偽造して買主を騙すのは、地面師の典型的な手法です。

現にニセの所有者を名乗った女性は裏業界では有名だったようで、池袋のKという通称もあったほど。

しかしこの事件は、このなりすまし女性だけの犯罪とは考えにくいものがあります。

規模があまりにも大きいですし、関係者がどれぐらいいたのかわかりませんが関係していた人間のほとんどが地面だったのではと思いたくなるほどです。

仲介業者・司法書士は見抜けなかったのか?

事件となった不動産取引にどれだけの人間がかかわっていたのか、詳しいことはわかりませんが、発表されている範囲ではIKUTAホールディングス、積水ハウス、司法書士がかかわっているのは間違い違いありません。

他に考えられる関係者として不動産ブローカー、弁護士、仲介業者といったところでしょうか。

積水ハウス側は所有権移転請求が却下されるまで詐欺に気づかなかったようですが、なぜ気付かなかったのかとても気になります。

手付金だけでも15億円といわれていますが、売買予約の仮登記の時点で見抜くことが出来れば、被害は15億。莫大な損害ですがそれでも63億よりはマシです。

決済日をむかえ所有権移転登記申請まで行われたということであれば、司法書士が地面師グループでないかぎり、最後の最後まで誰も気付かなかったということです。

最終的に法務局が書類に不備があることを指摘して、所有権移転登記申請を却下しているので、法務局では書類が偽物であったことをつきとめています。

法務局が気付いたのであれば、司法書士も注意深く確認すれば気づいたはずで、司法書士も地面師グループだったのでは?と疑問が残ります。

しかも司法書士が地面師側だったとしても、「私も騙されたんです!」といえば被害者として装うことも難しくありません。

これは地面師詐欺ではよくあることで、買主以外みんなグルということは珍しくないんです。”なりすましの所有者(売主)”以外の仲介業者や司法書士は「私も騙されたんです!」という善意の第三者を演じることで犯人とみられず裏でお金を受けることも可能です。

ただ積水ハウスレベルの会社であれば専属の司法書士を抱えているはずです。所有権移転登記申請は買主側が司法書士を用意するのが慣習ですから、専属の司法書士がグルというのも考えにくくなります。

実際にはどのような司法書士がかかわったかがわかりませんが、地面師事件では司法書士がグルになっていることも多く、なりすましの女性だけが犯人だとは考えにくい理由の一つです。

どこまでが地面師グループなのか?

どこまでが地面師グループなのかは警察の捜査をまたないとなんともいえないところです。

もうすこし事件の関係者の情報が明らかになれば、いろいろと推理することもできますが、現段階では”なりすましをした女性”以外に関係が疑われるのは不動産ブローカーや担当の司法書士でしょうか。

それも個人の創造の息をでないので、これが真実というわけではありません。

ネットの記事などではIKUTAホールディングスが怪しいという情報もありますが、IKUTAホールディングスは何度となく積水ハウスに土地を転売しているので、イレギュラーな取引ではなかったようです。

まとめ

積水ハウスの発表以降新しい情報がでてきていませんが、不動産にかかわった経験のあるものとしてすごく興味のある事件です。

今は現役を退いてしまっていますが、今回の事件は金額の規模が大きいので目立っていますが、高齢の所有者をねらった地面師詐欺はあとを絶ちません。

地面師事件は人間関係が入り組み巧妙な手口で人を欺くので、野次馬根性丸出しでついつい好奇心を掻き立てられてしまうのですが、本来は重大な犯罪です。

健全な不動産業界づくりのためにも、当局の捜査が進み全容が解明されることを願っています。

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