マンションを売ってでた損益は所得控除できる?

      2016/05/27

マンション売却による損益は所得控除できる?

不動産は分離課税

不動産を売却(譲渡)したことによる収入(所得)のことを譲渡所得といいます。譲渡によって損失がでたときは譲渡損失になります。

大前提としてマンションを売買したときの所得や損失は、給料や事業などの所得と合算して課税対象にすることは原則できません。

たとえばマンションの譲渡所得が1,000万円あったとして、事業所得が-500万円の赤字だったとしても合算して500万円が課税対象とはできない仕組みになっています。

譲渡所得についての1,000万円と事業所得-500万円がそれぞれ課税対象になる形式をとっています。

これを分離課税といいます。

不動産同士の所得や損失であれば足したり、引いたりすることは可能です。たとえばマンションを2部屋売却したとします。

1部屋は譲渡所得1,000万円、もう1部屋は譲渡損失300万円だった場合、1,000万円-300万円=700万円の譲渡所得とすることは可能です。

例外的に分離課税を避ける方法

不動産の所得や損失について分離課税が大原則なのですが、ただし特例があります。マイホームを売却して譲渡損失が出た場合に限って他の所得と損益を通算できる特例があります。

『居住用財産の買い替え等の譲渡損失の損益通算および繰越控除』と『特定居住用財産の譲渡損失の損益通算および繰越控除』の2つの制度です。

すごく難しそうな制度に感じますが、言っていることはすごく簡単です。

『居住用財産の買い替え等の譲渡損失の損益通算および繰越控除』とは『マイホームを買い替えて譲渡損失がでたら他の所得(給与など)と合算して課税対象にするか、繰延できる制度がありますよ!』ということです。

『特定居住用財産の譲渡損失の損益通算および繰越控除』とは『マイホームを売って譲渡損失がでたら他の所得(給与など)と合算して課税対象にするか、繰延できる制度がありますよ!』ということです。

つまりマイホームを売却して損失がでると損益通算できることになっているんです。

詳細はこのあとのマンション売却にかかわる5つの特例のなかで説明していきます。

まずは用語確認から

不動産にかかわる税金の仕組みをしるためには言葉を知っておく必要があります。

難しく聞こえる用語もあるかもしれませんが、意味は簡単です。まず用語の意味を理解してから特例の内容について調べていきましょう。

譲渡所得

譲渡所得とは不動産の売却(譲渡)によって得た利益のことです。売価額から取得費や譲渡費用を差し引いた金額です。

売却額 - (取得費 + 譲渡費用) = 譲渡所得

譲渡課税所得

譲渡課税所得とは譲渡所得から控除額を引いた価格です。

譲渡所得 - 控除額 = 譲渡課税所得となります。

譲渡損失

不動産を売却したことによって損失がでた場合は譲渡損失になります。計算方法は譲渡所得と同じで、金額がマイナスになった場合は譲渡損失となります。

売却額 - (取得費 + 譲渡費用) = 譲渡損失

譲渡費用

売却(譲渡)するときにかかった費用のことです。

仲介手数料、登記費用、印紙税、測量費用など売却するために直接必要だった費用を譲渡費用といいます。

取得費

取得費とは売却(譲渡)した不動産を購入した時にかかった費用のことです。

取得費の求め方は二通りあります。どちらか高い方が取得費とされます。

①譲渡した不動産の売却額の5%

②購入代金、建築代金、購入時の仲介手数料など購入時に直接かかった費用から建物の減価償却費を差し引いた額

①か②のどちらか高い方が取得費になります。

マンション売却にかかわる5つの特例

ここで紹介している特例はすべてマイホームについての特例です。マイホームの定義は住民票がそこにあり、一定期間そこに住んでいることが条件です。

譲渡所得がでたとき

1、3,000万円特別控除

マンションや戸建てのマイホームを売却したときに利用できる制度が3,000万円特別控除です。

売却額から取得費、譲渡費用を差し引いて譲渡所得を計算します。

売却額-(取得費+譲渡費用)=譲渡所得

譲渡所得がでたら控除額の3,000万円を差し引きます。

譲渡所得-3,000万円=譲渡課税所得

売却額:2,000万円

取得費:1,350万円
(購入代金1,000万円)(仲介手数料40万円)
(登記費用10万円)
(減価償却300万円)

譲渡費用:162万円
(仲介手数料60万円)
(印紙代2万円)

2,000万円-(1,350万円+162万円)=488万円

譲渡所得=488万円

譲渡所得が3,000万円以下なので控除を利用すると譲渡課税所得が0円になります。

「あれ?3,000万円の控除を利用したらマイナスだから譲渡損失になるのでは?」

と思ったかもしれませんね。

3,000万円の特別控除は譲渡所得以上の利用することができないんです。つまり488万円-3,000万円=-2,512万円とすることができないんですね。

3,000万円控除の上限はあくまでも譲渡所得額までです。そのため488万円の譲渡所得額なら、利用できる控除額も488万円までとなります。

このように3,000万控除を利用しても、譲渡所得を超える控除は受けられません。そのため譲渡損失とすることはできない仕組みになっています。

2、10年所有軽減税率

3,000万円の特別控除を利用しても譲渡所得が発生してしまった場合でも税金を抑える方法があります。

それが10年所有軽減税率です。軽減税率を利用するためには条件があります。

①日本国内にあるマイホームを売却すること

②すでに住んでいない場合には住まなくなった日から3年目の12月31日までに売却すること

③売却した年の1月1日時点で10年以上所有していること

④売却した年の前年、前々年にこの特例を受けていないこと

⑤3,000万円特別控除”以外”の特例を受けていないこと

⑥特別な関係にある人(親、兄弟、親族、愛人など)以外に売ること

この条件をすべて満たす場合に限り軽減税率を適用することができます。

軽減税率は譲渡課税所得が6,000万円までは所得税が10%、住民税が4%になります。6,000万円を超える額では所得税が15%、住民税が5%となります。

譲渡課税所得6,000万円まで 所得税10% 住民税4%

譲渡課税所得6,000万円越え 所得税15% 住民税5%

となります。

軽減税率はマイホーム特別控除との併用が可能です。

たとえば譲渡所得5,000万円あった場合、3,000万円特別控除を利用すると、譲渡課税所得は2,000万円になります。

5,000万円-3,000万円=2,000万円

この2,000万円の譲渡課税所得に対して軽減税率が適用されます。この場合は6,000万円以下なので、所得税10%、住民税4%が適用されます。

 

3、特定居住用財産の買換え特例

マンションの買い換えをして譲渡益がでたときの特例が『特定居住用財産の買換え特例』です。『特定居住用』と書くと意味がわかりにくいですが、簡単にいえば自宅のことです。

買換特例のメリットは一回目の買換えでは譲渡益を無いものをみなすため、課税されることがありません。つまり所得税と住民税が発生しません。不動産の所得税や住民税は額が大きいためメリットも大きいです。

デメリットもあります。買換えた新しい物件を将来売却するときに、今回発生した譲渡益を上乗せした金額について課税されてしまいます。

例を見てみてみましょう。

平成4年に500万円で自宅マンションAを購入。

A取得費500万円

平成15年に自宅マンションAを600万円で売却。1,000万円の戸建住宅Bに買換え。

A取得費500万円-A売却額600万円=A譲渡所得100万円

※この時点では買換え特例を使って譲渡所得を無しとみなす

B取得費1,000万円

平成26年に1,200万円で戸建住宅Bを売却。

B取得費1,000万円-B売却額1,200万円=譲渡所得200万円

A譲渡所得100万円+B譲渡所得200万円=譲渡課税所得300万円

平成21年の時点では税金がかかりませんが、26年に戸建住宅Bを売却したときにマンションAの譲渡所得も上乗せした譲渡課税所得額になります。

買換特例は3,000万円控除、軽減税率との併用はできません。そのため、マイホームを売却した場合は3,000万円控除か軽減税率のどちらかお得な方法を選択するケースが多いです。

しかし、物件の条件や金額によっては買換特例の方がメリットがでることはありますので、条件を比べて利用するようにしましょう。

 

譲渡損失がでたとき

マイホームを売却した際には譲渡所得がでるケースばかりではありません。物件の条件や経済状況によっては損失が発生してしまうことも珍しくありません。

たとえばマイホームを売却した金額では住宅ローンが返済できなかった場合などは損失になってしまいます。こんなとき分離課税のままでは経済的な負担が大きくなってしまい、生活していくのが厳しくなってしまいます。

そのようなときの特例として給与所得や事業所得と合算して税金を抑えることができます。特例を利用して経済的な負担を軽くすると良いでしょう。

4、居住用財産の買換等の譲渡損失の損益通算および繰越控除

『居住用財産の買替え等の譲渡損失の損益通算および繰越控除』と難しく書いてあるので、読んだだけでは何のことかさっぱりわかりませんよね。

簡単に言うと『マイホームを買換えて譲渡損失がでたときの損益通算や繰越控除』ということです。

所有期間5年を超えた自宅を売却した場合に受けられる制度です。

利用するためにはいくつか条件を満たす必要があります。

①自分が住んでいるマイホームを譲渡(売却)したこと

②譲渡(売却)した年の1月1日の時点で所有期間が5年を超えていること

③譲渡(売却)した年の前年の1月1日から譲渡(売却)した翌年12月31日までの間に床面積が売却の50平方メートル以上であるものを取得すること

④買換えした年の翌年12月31日までに取得した住宅に居住すること

⑤取得した年の12月31日の時点で住宅ローンが10年以上残っていること

⑥繰越控除を利用する場合はその年の合計所得が3,000万円以下であること

⑦譲渡(売却)先が親族等でないこと

これをすべて満たすと他の所得と通算して損益を計算し、かつ繰越控除を受けれられる可能性があります。

5、特定居住用財産の譲渡損失の損益損失の損益通算および繰越控除

こちらも長くて意味不明な名前です。簡単に言えば『マイホームを売却して譲渡損失がでた場合の特例』となります。

多くの場合マンションなどの不動産を購入するときには住宅ローンを利用して購入します。

しかし、なにかの事情で住宅ローンの支払い中に売却することになったとき、売却した代金では住宅ローンが全額返済できないことがあります。

たとえば譲渡損失がでていて、住宅ローンの残りが3,000万円あり、売却額が2,000万円のとき、差額の1,000万円については他の所得と損益通算できる金額になります。

この特例も適用するには条件があります。

①自分が住んでいるマイホームを譲渡(売却)したこと

②譲渡(売却)した年の1月1日の時点で所有期間が5年を超えていること

③譲渡(売却)したマイホームの売買契約日前日に住宅ローンが10年以上残っていること

④マイホームの譲渡(売却)額が住宅ローンより低いこと

⑤繰越控除を利用する場合はその年の合計所得が3,000万円以下であること

⑥譲渡(売却)先が親族等でないこと

⑦平成27年12月31日までに譲渡すること

⑧マイホームを売却した年の前年及び前々年に他の特例を受けていないこと

まとめ

自宅として利用していたマンションを売却すると様々な特例を受けることができます。

譲渡損失が出た場合には他の所得と損益通算することもできるので必ず利用しましょう。

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