埋蔵文化財包蔵地域は土地価格に影響する?

2017/01/13
埋蔵文化財包蔵地と土地価格
埋蔵文化財包蔵地とは文化財保護法によって、国や地方公共団体が周知している地域のことで、遺跡地図や遺跡台帳によって地域を調べることができます。
現在、日本には46万か所以上の埋蔵文化財包蔵地の指定があります。
こういった埋蔵文化財包蔵地にある土地で建築工事を行うには、工事着手の60日前に教育委員会に届け出をしなければいけません。
届け出をすると事前に試掘をおこなったり、基礎工事の段階で役所の立ち合い検査が行われます。
何もなければ工事続行
立ち合い検査や試掘の結果、重要なものが発見されなければ建築工事に支障はありません。
既存の埋蔵文化財包蔵地でもすでに家が建っているのが普通ですし、新たに建築を行うときでも問題にならないことのほうが多いです。
ただし、試掘や立ち合い検査で文化財に該当するような貴重な品がでてきてしまうと、厄介な問題になります。
発掘調査は長ければ1年も2年もかかるときがあり、しかも発掘費用は事業者(建築主)の負担になります(個人の場合には補助金があります)。
あまりケースは多くないですが、工事が大幅に延期されてしまうリスクはおぼえておいた方が良いでしょう。
木造なら埋め戻すことも
出土品があっても木造の戸建なら埋め戻して建築できる可能性があります。
木造戸建ての場合、鉄筋コンクリート製の集合住宅などとくらべて重量が格段に軽いので、地盤の改良があっても表層だけで済む場合があります。
地盤の改良工事の深さが出土品がでてきた地層まで達さないのであれば、問題なく建築することが可能になります。
このあたりは個別の物件の構造や地盤改良図面などを使って、関係する役所との話し合いになりますが、埋蔵文化財に影響のない範囲であれば工事が可能となる可能性が高いです。
土地価格が安くなるのでは
ここまでの話で気になるのは『工事が大幅に遅れてしまう危険がある埋蔵文化財包蔵地では、土地の価格が安くなってしまうのでは?』という疑問です。
しかし、実際のところあまり影響はないと考えて大丈夫でしょう。
理由は2つあります。
ひとつは埋蔵文化財包蔵地というのはそう珍しい地域ではないからです。
日本には47万か所以上の埋蔵文化財包蔵地があります。
そのなかには普通に住宅地として活性化している地域がたくさんあります。
埋蔵文化財包蔵地の規制で工事が毎回遅れるようなことがあれば、その地域にはだれも家を購入しなくなります。
しかし、実際のところは日々新しい建物が建築されているわけで、価格に影響をあたえないひとつの証拠です。
もうひとつの理由は埋蔵文化財包蔵地に指定されるような土地は、もともと歴史が古く地域がブランド化している可能性があるためです。
代表的なところでは京都や鎌倉などが良い例です。
これらの土地は埋蔵文化財包蔵地が多く存在していますが、その影響で土地価格が安くなっているということはありません。むしろ、他の地域より価格が高いぐらいです。
こういったことから、売却しようとしている土地が埋蔵文化財包蔵地だからといって価格に影響がでることは少ないと考えて大丈夫でしょう。
まとめ
埋蔵文化財包蔵地にある土地に建築工事を行うには事前の届け出が必要です。
立ち合い検査や試掘で貴重な出土品が見つかった場合は、本格的な発掘調査の必要があります。
木造のような軽い建物なら出土品が見つかった地層をいじらないことを条件に建築を許可されることがあります。
埋蔵文化財包蔵地だからといって土地の価格が安くなることはないと考えて大丈夫でしょう。